注入治療の推奨度

美容医療診療指針(令和3年度改訂版)は、顔のシワ・タルミに使われる注入治療について次の推奨度を示しています。

推奨度1は「治療を希望する患者には、行うことを強く推奨する」、推奨度2は「治療を希望する患者には、行うことを弱く推奨する」という意味です。「行わないことを強く推奨する」とされた治療もあります。推奨度は学会が論文の質と量をもとに示した目安で、個人に効果が出ることを保証するものではありません。

CQ治療推奨度推奨文(要約)
2-4ボツリヌス菌毒素製剤(表情ジワ)1(行うことを強く推奨)注入により顔面の表情ジワの改善が期待できる
2-2-1ヒアルロン酸製剤2(弱く推奨)簡便な施術でシワの改善が期待でき、合併症は軽微なものがほとんど。ただし血管内への誤注入による皮膚壊死や失明などの重篤な合併症の報告がある
2-2-2ボツリヌス菌毒素製剤とヒアルロン酸製剤の併用2(弱く推奨)併用で治療効果が高まることが期待でき、併用で合併症の危険性が増えることはない。ヒアルロン酸の誤注入には十分な注意が必要
2-5-1多血小板血漿(PRP)2(弱く推奨)単独療法はシワに有効とするエビデンスのある論文が多い。血管内への誤注入を避ける注意が必要
2-5-2bFGF(トラフェルミン)を添加したPRP2(行わないことを弱く推奨)安易には勧められない。注入部の硬結や膨隆などの合併症の報告が多く、bFGFの注入は適正使用とは言えない
2-3非吸収性フィラー1(行わないことを強く推奨)晩期合併症の危険性があり、除去が困難。長期の安全性が確立されていない

ボツリヌス菌毒素製剤:表情ジワ

ボツリヌス菌毒素は神経の接合部でアセチルコリンの働きを遮断し、筋肉の動きを弱めることで、眉間などの表情ジワを目立たなくします。指針の解説は、米国FDAの集計(眉間のシワ)で重篤な副作用は認められず、多かったのは効果がない、注射部位の局所反応、眼瞼下垂だったと紹介しています。承認状況は「承認品もあるが、未承認品も広く使用されている」とされています。

筋肉の動きを止めても静止時に残るシワには、ヒアルロン酸などのフィラーが併用されるようになったと解説されています。

ヒアルロン酸製剤:簡便だが重い合併症もある

指針によると、ヒアルロン酸製剤の注入は国内でも年間14.9万件(2017年)、12.4万件(2018年)と多く行われています。合併症のほとんどは腫れ・痛み・発赤などの軽いものとされる一方、血管内に誤って注入されると、その血管が栄養する範囲に皮膚壊死が起こり、時に失明や脳梗塞などの重い合併症を生じることが報告されています。顔の皮下の動脈から目の網膜中心動脈へつながる吻合を介して閉塞が及ぶと考えられています。承認状況は「承認品もあるが、未承認品も広く使用されている」とされています。

勧められていない注入

指針が「行わないこと」を推奨しているのは2つです。

  • 非吸収性フィラー:体内で吸収されない充填剤。晩期合併症の危険性があり、除去が難しく、長期の安全性が確立されていないとして、行わないことを強く推奨しています(未承認)。
  • bFGFを添加したPRP:本来は褥瘡や皮膚潰瘍に保険適用されている医薬品(トラフェルミン)をPRPに添加して注入するもの。硬結や膨隆の合併症の報告が多く、適正使用とは言えないとしています(未承認・適応外使用)。

カウンセリングで「吸収されないので長持ちする」「成長因子入り」と説明された場合は、製剤名と承認の有無を確かめてください。

施術前に確認すること

  • 使う製剤の名前と、国内で承認されたものか
  • 吸収されるタイプか、されないタイプか
  • 血管内への誤注入が起きた場合の対応(すぐに処置できる体制か)
  • 効果の持続期間の目安と、繰り返す場合の費用

注射を使わないたるみ治療(HIFU・高周波・糸リフト)はたるみ治療の種類で比較しています。契約前の確認は美容医療の契約前に確認する5つのこと、事前の下調べは美容医療の下調べを参考にしてください。

よくある質問

ボトックス注射はシワに効果がありますか?

美容医療診療指針(令和3年度改訂版)は、顔面の表情ジワの改善にボツリヌス菌毒素製剤による治療を推奨度1(治療を希望する患者には、行うことを強く推奨する)としています。安全性は比較的安全とされ、承認品もありますが未承認品も広く使われているとされています。

ヒアルロン酸注射のリスクは何ですか?

合併症のほとんどは腫れ・痛み・発赤などの軽いものとされています。ただし血管内に誤って注入されると皮膚壊死が起こり、時に失明や脳梗塞などの重い合併症を生じることが報告されています(美容医療診療指針 令和3年度改訂版)。

長持ちする非吸収性のフィラーは受けても大丈夫ですか?

指針は非吸収性フィラーの注入を「行わないことを強く推奨する」としています。晩期合併症の危険性があり、除去が困難で、長期経過での安全性が確立されていないためです。

出典・参考(公的機関)

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